2007-04-02

ロックの歴史(4) 70年代〜現在

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今回は、皆さんお待ちかねの70年代から現代までのロックを眺めてみる。これは高校生の君達が生きている現代まで繋がっている。だからこそ、君達は私の判断が間違っていることに気がつくかもしれない。なにしろ君達が生きている時代なのだから。ただ、そうした中から君達は歴史を語ることがいかに困難であるかを感じて欲しい(これでは、ただ自分を弁護するようだが)。

70年代

音楽はとても多彩になる。

  1. 既に確立している「ハードロック」が本領発揮する一方、
  2. クラシックやジャズを取り入れた「プログレッシブ・ロック」が活発となり(ピンク・フロイド、キング・クリムゾン、イエス、ユーライア・ヒープなど)
  3. 妖しい化粧とコスチュームの「グラムロック」(T Rexやデヴィッド・ボウイなど)が次々と現れる。
これらはほとんどUKのバンドである。聴けばわかるが、さすが病んだ国イギリスと唸らされる。この「テクニカルで妖しい」系譜は現代まで続いていると私は思う。私はたまにピンク・フロイドやクリムゾンを聴くことはあるが、ほとんど聴かない。

また、これもUKが中心だが、「縦ノリ」なビートの重さの追求は「ヘビー・メタル」を生んでゆく。この歴史を簡単に流すと、ブラック・サバスやマウンテンに始まりジューダス・プリーストが様式を確立し、その後、アイアン・メイデン、モントリー・クルー、メタリカに受け継がれてゆく。現在でも根強いファンがいて、HR/HM [ハードロック/ヘビーメタル] として独自の地位をしっかりと持っている。君のクラスにも一人くらいヘビメタファンってのはいるんじゃないかな? 大概、髪の毛が長めで痩せた奴であり、妙に信者勧誘に熱心である(ただの私の偏見である)。私は聴かない。

後半では逆にそうして複雑化するロック・シーンに抵抗するかのように、ニューヨークやロンドンなどで暮らす、貧しい白人の不満の叫びは「パンク・ロック」を生んでゆく。特にセックス・ピストルズはパンクの伝説として語り継がれている。私は心情や方向性としてはパンクは大正解だと思うが、残念ながらその音楽性の低さからあまり聴いていない。ちなみに、そのストレートさこそがパンクの良さなのであって、私はパンクを全然分かってない男と言える。よく私は友人にいじめられるので、君達はしっかりとそこらへんを理解して、いじめられないようにして欲しい。

あと、クィーンも抜けないはずだが。私はあまり聴いていない。

考えてみりゃ、私はほとんど70年代を聴かない男らしい。そんな男がこんな文書を書いていいのか不安である。こんな文書を信じて軽い気持で人と話すと、好きな人は異常に好きなので、とんでもない喧嘩になることがある。注意が必要である。

一方でアメリカでは何があったかというと、ウエスト・コースト・ロックやサザン・ロックを挙げておきたい。

  1. サザン・ロックのオールマン・ブラザーズ・バンド
  2. ウエスト・コーストのドゥービー・ブラザーズや、
  3. 「ホテル・カリフォルニア」のイーグルス
などである。

個人的にはオールマンのデュエイン(デュアン)・オールマンのスライドも好きだし、ドゥービーの「Long Train Runnin'」や「Listen to the Music」での細かい刻みは好きだし(ただ、これはR&Bを見ればもとがあるのだが……)、「け、あれかよ」とか思いながらもやっぱりクリーンサウンドで哀愁のあるアルペジオフレーズと「ういっ!」というディストーションサウンドを基本に忠実に使う「ホテル・カリフォルニア」はやっぱり良さがあると思う。これは私がギター好きだからというのも大きいと思う。ただ、「それで彼らが何か新しい音楽を生んだか?」と訊かれれば「うーん」と悩み「いいえ」と答えてしまうだろう。

またクラプトンが参加した、南部バンド、デレク&ドミノスの「いとしのレイラ」も私は大好きだが、ドゥエイン・オールマンのスライドが特に注目されるので、クラプトンの文脈というよりここに書いておく。ちなみに、デュエインのスライドも辿ればT-ボーン・ウォーカーあたりにつながり、エルモアに抜けるだろうし、やっぱり、そこら変のR&Bとモダン・ブルーズあたりはもうちょい知っておかないと、人様に文章を書いてはならないとつくづく痛感する。

こうして70年代は多彩なジャンル・様式を確立した時代で、中には現代にも続くロックの様式も含まれている。特にUKの分野の発達は目覚ましく、ロック通ぶるなら、押さえないわけにはいかないだろう(何度も言うが、私はあまり興味はないが)。

80年代

80年代前後には新しいジャンルや様式が形成されるというよりは、個性的な実力派が続出し「ニューウェーブ」と呼ばれてゆく。これはスティングのポリス、イギリスの歌姫のケイト・ブッシュ、パンクをうたう東独のニナ・ハーゲンなどが注目される。

またロックを「白人の音楽」として無視して来た黒人からもプリンスが登場した他、一般に「ワールド・ミュージック」呼ばれるのだが、非西欧社会からもロックの影響を強く受けつつも民族的な要素を持った音楽が発信されていった(ヨーロッパのジプシー社会からジプシー・キングス、マリのサリフ・ケイタ、南アフリカのマハラティーニ&マホテラクイーンズなど)。

一方、違う文脈で別の機会にR&Bから説明たいのだが、ラップやヒップホップもこうした背景を元に生まれていることも記しておく。

あと、アイルランドのU2(Internet Archiveに音源)やアメリカ・ロック演歌としか思えないブルース・スプリングスティーンなど、ちょっと従来の文脈とは違うロックバンドも成立していった。

ヘビメタな重さと、ポップなメロディーとをほどよく組み合わせた上に、高音のヴォーカルと、高度なギターテクを誇示するようなバンドも90年代前半あたりまで、よく売れた(ガンズ・アンド・ローゼズ、エアロスミス、ボンジョビ、ミスター・ビッグ、エクストリーム、ドリームシアターなどなどなど)。同時に、速弾き超絶技巧ギタリストがなぜか流行り、ヴァンヘイレン、イングウェイ・マルムスティーン、インペリテリなどが「誰が世界で一番最速か」を競っていた。今となっては何が何だかよく分からない。

こうして80年代は高度なテクと優れたセンスに支えられ、様々な人々が様々なことをやったが、結局何があったのかよく分からない。ただ、個人的な思い出から言って、ガンズなどはとても懐しいし、インギーの真似もよくやったので、悪くいうのもあれだが、今のインギーなどを見ると「一体、何だったんだ」という気分になる。そう、ガンズも一体何だったんだろう。音楽とはそういうものかもしれないが。

(あとR.E.Mとか書かなきゃ)

90年代から現在

もう書くのに疲れてやめたいが、あと一息なんで書くことにする。

とにかく個人的にはニルヴァーナ(Nirvana)である(Internet Archiveに音源あり)。グランジである。オルタナティブ・ロックである。ヴォーカルのカート・コベイン(コバーン)(Kurt Cobain, 1967-1994)は死んでしまったが、パール・ジャムやアリス・イン・チェインなどまだ元気な筈である。時代背景としては上述の「高音ヴォーカル、超絶テク・ギター」や商業主義などへのアンチテーゼであり、ある種「パンク」である。しかし、上述80年前後のパンクと異なり、ヴォーカルの歌唱力が凄まじく、難しいことはせずにストレートでカッコいいリフ、マジで真剣なドラムとベースは「そうだよ! これだよ!」という気分にさせてくれる。ドラム、ベース、ギター&ヴォーカルのスリーピースでばっちり決めている。シンプル・イズ・ベストである。ギターソロも難しいことはしないが、逆にそれがかっこよく思う。

若者文化を変えた「Smells Like Teen Spirit」や「Rape Me」が必聴なのは勿論だが、「When Did You Sleep Last Night」も必聴である。この曲から、レッドベリーやトーマス・ドロシー(Thomas A. Dorsey, Georgia Tom,1899-1993、「ゴスペルの父」)などのアメリカン・トラディショナル・フォークやゴスペル、「ロックンロールに行かなかった」R&Bなどに興味を湧かせ、100年単位で育まれたアメリカの歌に思いを馳せるのもいいだろう。深い深い世界である。深過ぎて何が何だか分からないが、そのうちこの分野も書きたい。

ただ先日若者に「ニルヴァナ? ああ、あの古いロックですね」と言われた。現実は厳しい。

あと特筆すべきはビョーク(Bjork)(Internet Archiveに音源)だろう。ギターもベースもドラムもなく、サウンドはまったくロックではないのに、なぜかロックなのである。ただの天才少女として終わるか、新しい音楽を生むかは、私はまだ分からない。

さて、90年代は、ニルヴァナとビョークなどにより新しいジャンルへ向かった時代だったと思うが、一方で終末を感じさせる年代でもあったと思う。

  1. まず、マリリン・マンソン(Marilyn Manson)(Internet Archive)。ハードロックからメタルの終点であり、「ああメタルは、これで終わりだな」という気分にさせてくれるんじゃないだろうか。
  2. 次にケミカル・ブラザーズ。音楽はまるでオモチャ。音楽的可能性を捨てて、ただ遊んでいる風であり「ああ、こういうのも終わりなんかな」という気分にさせる。
まあ、個人的な感想だが。

あとはUKでレディオヘッド(Radiohead)(Internet Archiveに音源。Creepもある)とかオエイシス(オアシス,Oasis)(Internet Archiveの音源)とかも外せないだろう。

ただ、UKシーンで私がアホみたいに注目しているのは、ブリストルである。別名「踊れないダンスミュージック」。

  1. まずポーティスヘッド。ヴォーカルのベスの歌唱力の高さが、表現の閉塞感を鬼気迫るもにしている。私はジャニスの次に彼女が凄いと思う。
  2. マッシブ・アタック(Massive Attack)(Internet Archiveに音源あり)の「Future Proof」では、冷たいシンセの電子音が逆に既に私達が肉体化してしまったことを教えてくれ、ギターは生き物のように呼吸し時に叫ぶ。パンクのように叫ぶことすら疲れてしまったような閉塞感、しかし、それでも未来に向かわなければ人間は生きてゆけないことによる深刻な闇の激しいサウンドは、これまでの人類史上存在したか疑問である。

こうして90年代から現代は古い音楽が整理され、新しい音楽に着実に向かっている時代であると私は感じている。あくまで個人的な感覚から言えば、

  1. いかにも超絶技巧なヴォーカルとギター、いかにもなシンセの音などは否定。そんな目新しさにはアキアキ(全員。特にニルヴァナ。ブリストルも「自然に感じる」シンセの音。ケミカルはそれを逆手に利用)
  2. 若者連帯したムードは微塵もなく、深刻な精神的な闇、社会の閉塞感が歌われる(全員)
  3. 「売れたい」ことも否定し、「真剣」に音楽している(ニルヴァナ、ブリストルに顕著)
  4. オケやシンセの導入によるバンド概念の変更(ビョーク、ブリストル)
などの特徴があると言えると思う。まあ、あまり真剣にこの問題考えてないから、本気にしないように。だいたい問題は「音」であって、こんなアイデアの問題ではない。

アホみたいにハイペーズで書いて来たので、絶対いつか書き直す。少なくとも90年代から現在はもっと書かねばならないだろう。だから、たびたび、このサイトを見にきてくれると嬉しい。

何度も書くが、こんな駄文を信用しないように。そもそも、音楽においてジャンルなどの言葉は後付けで、それも商売のために生まれたものばかりである。言葉で音楽を語るなんていうのはバカらしいところもいいところである。

なぜ、こんな文章を私が書いたか、分かるだろうか? それは、こういう文書を私が高校生の時に欲しかったからである。音楽に入る中で、CDを片っ端から聴いていたのだが、ライナーノーツだけじゃ断片的で、簡単で大雑把なロックの歴史の概説が欲しかったのである。でも本を読むのは疲れる。パンフレット程度の分量で、ある程度ロックを概観できる文書がとても欲しかった。そして、正確さなんてどうでもよかった。結局、大切なのは音楽で自分が何を感じるかなので、大雑把に見渡せればそれでよいと思う。

この講座では、出来る限り大雑把に全体を見渡せるように配慮し、本来書きたいコメントを半分にした(そうすれば、全体の分量は半分になるから)。まあ、こういうアホのような文書を読みたい高校生が現在いるかどうか分からないし、もっとよい文書がネットにはあふれていることだろう。それに、こんな泡沫ブログなんて見付けることも大変で、結局、埋もれてしまうことだろう。

しかし、こうした文書を書くことは、自分のロックの歴史を整理するのにとても役に立った。だから、まあ、書くことが、私だけには最低、有益だったのだから、まあ、それでよしということにしておこう。

では、最後に、読んでくれて、どうも読んでくれてありがとうございました。

更新履歴

2007-03-31 作成

2007-04-02 Internet Archiveの音源へのリンク追加(Nirvana, Marilyn Manson, Radiohead, Oasis, Bjork, Massive Attack)